バイバイン 英 Baybayin script
バイバイン(アリバタとも)はブラーフミー系の文字で,ジャワのカウィ文字を祖先とする。過去のフィリピンでタガログ語をはじめ,イロカノ(Ilocano)語,ビコル(Bicol)語,セブアノ(Cebuano)語(ビサヤ語とも)などフィリピン諸語を表すために使われた。
文字構成
子音字はは音価 /a/ を含み,それ以外の母音は上下につける補助記号によって表す,というインド系文字の特徴を保持する。上に付く場合は /i/ または /e/,下に付く場合は /o/ または /u/ を表す(つまり,/i/ /e/,/o/ /u/ は表記上区別されない。)。 また,元々は音節末の子音を表記せず,読む時は文脈から子音の有無を判断する必要があった。例えば,bundok (山)は bu-du と綴られた。後にスペイン人の考案で,文字の下に十字型の母音打消し記号を付けて子音だけを書き表す事も行われている。 以上の点から,文字使いのみから書き写された言語を正しく読み下すことは,その言語の知識をもたない限り,不可能である。Baybayin 参照
バイバインの言語別書体例
前述の各種言語において用いられる書体の相違,また時代による書体の変化をまとめて示す。
Variants of baybayin. Abugida in the Philippines, also known as Baybayin internationally is varian of scripts from the Luzon and Visayas, Philippines. [Paul Morrow / CC BY-SA 4.0 / 出典] |
タガログ語
タガログ語文例
タガログ訳「主の祈り」[Convent of Pater Noster / Tagalog, Baybayin>出典] |
イロカノ語
フィリピンの主にルソン島北部とミンダナオで用いられる,オーストロネシア語族に属するイロカノ語を表記するための文字。タガログ語を記述する Baybayin syllabary が用いられたが,16 世紀,スペインの植民地になり,ラテン文字に取って代わられた。
文字構成
イロカノ語文例
「主の祈り」[Convent of Pater Noster / Ilocano, Baybayin (Ancient Filipino script, Iloko, Ilokano)] |
ビサヤ語
ビサヤ語(セブアノ語とも)は,オーストロネシア語族の言語である。フィリピンのセブ州,ボホール州,ネグロス・オリエンタル州,レイテ州西部,さらにミンダナオ島西北部などで広く話されており,他にもごくわずかにサマール島に話者が存在する。これらの地域ではタガログ語(フィリピン語)よりもセブアノ語を母語とする人が多い。スペイン植民地化以前の 16 世紀まで,音節文字バイバインを使用していた。
文字構成
ビサヤ語文例
「主の祈り」[Faulmann, K. (1880) Illustrierte Geschichte der Schrift (Wien, A. Hartlebens Verlag) p. 496.] |
関連リンク・参考文献
- 崎山理(2001)「東南アジア島嶼部の文字」河野六郎, 千野栄一, 西田龍雄 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂
- 山田幸宏(2001)「フィリピンの文字」河野六郎, 千野栄一, 西田龍雄 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂
- バイバイン(文字) | Baybayin
- Omniglot Tagalogs
- ScriptSource Tagalog (Baybayin, Alibata)
- Baybayin Modern Fonts
- Ilokano language
- ScriptSource Ilocano
- Visayan language
- Omniglot Surat Bisaya