ランプン文字 英 Lampung script
インドネシア,スマトラ島南端部ランプン(Lampung)語を表記するために使用された「スマトラ文字」の一変種。この文字の使用は,すでに過去のものとなり,現在では残存的に使用されているにすぎないといわれている。ランプン文字の字体(書体)には多くの変異がある。しかし,すべての変異体を通じて曲線に冨み,北方のルジャン文字が「レンチョン(短刀)文字」と呼ばれるほど鋭角と直線を好むのと好対照をなす。 [1]
文字構成
ランプン文字は,「字母」と「符合」とからなるインド系の音節文字である。字母は,内属母音(inherent vowel)/a/ を含んで /Ca/ (/C/ は子音)を表記する。符合は,内属母音以外の母音を含んだ音節や閉音節を表記するために,字母の決まった位置に添加して使用される。
子音字
母音字
単語例
次に,単語の表記例を示す。それぞれ左から,ランプン文字表記,ローマ字転写(音韻表記),語訳である。
最後の2例にみられる第2音節のように,/CVC/ 型の音節を表記するとき, /V/ を表記する符合は,/C-/ を表記する字母に添えて書かれるのではなく,/-C/ を表記する字母に添えて書かれる。たとえば,/ikut/ は 〈i-ka-tu/〉と書かれ,/ratus/ は 〈ra-ta-su/〉と書かれる。〈/〉で転写した符合は,直前の字母が子音のみを表記することを示す。
ランプン文字文例
A bilingual Lampung-Malay collection of poems, written in Jawi and Lampung scripts [Unknown author / Public Domain / 出典] |
ランプン文字フォント
ランプン文字フォント KaGaNga は,通常の英語キーボード配列に準拠している。
注
- ^ 柴田紀男 (2001)「ランプン文字」河野六郎, 千野栄一, 西田龍雄 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂, pp. 1112-1114.
- ^ Pigeaud, Theodore G.Th. und P. Voorhoeve (1985) Handschriften aus Indonesien (Bali, Java und Sumatra). (F. Steiner Verlag Wiesbaden)
関連リンク
- Lampung language
- 中西コレクションランプン文字
[最終更新 2021/09/05]