パウチンハウ文字 英 Pau Cin Hau script
ティディム・チン語(Tiddim Chin)は,シナ・チベット語族チベット・ビルマ語派のクキ・チン語支に属する。クキ・チン語支は,約 50 言語からなる言語集団である。ティディム・チン語は,そのうちの北部チン語群に属し,約 35 万人弱の話者を有する。ティディム・チン語話者は,ミャンマー連邦北西部のチン州西部とザガイン管区東部,およびインド共和国北東部のマニプル州南部とミゾラム州北部に多く住み,近年ではミャンマー連邦の都市部,ミャンマー連邦国外への移住も見られるようになった。[大塚]
文字構成
パウチンハウ文字
ティディム・チン語には,ラテン文字による正書法のほか,パウチンハウ文字(Pau Cin Hau /paːucìnhàːu/)という独自の文字による表記もある。パウチンハウ文字とは, Laipian /làːipiàn/ と呼ばれるキリスト教系新興宗教を創始しティディム・チン語話者 Pau Cin Hau (1859~1948)が 1931 年に考案した文字である。 パウチンハウ文字は,別名 Tualla /tuallàːi/ 「現地の文字」と呼ばれることもある。もともとは 1,050 文字から成る表語文字であったが,3 度の改定を重ねるたびに文字数が減り,現在は 57 文字から成る表音文字となっている。子音文字 21 字,母音文字 7 字,9 種類のコーダ記号と 20 種の声調記号から成る。現在,パウチンハウ文字の読み書きができるティディム・チン語話者は非常に限られている。
パウチンハウ文字初級教科書(1932)
初級教科書 [Pandey Fig. 5] |
ユニコード
パウチンハウ文字のユニコードでの収録位置は U+11AC0..U+11AFF である。
注
- 大塚行誠 (2011)『ティディム・チン語(ミャンマー連邦)の文法記述』博士論文::東京大学.
- Pandey, Anshuman (2011) Proposal to Encode the Pau Cin Hau Alphabet in ISO/IEC 10646. ()
関連リンク
- Pau Cin Hau script
- Pandey, Anshuman (2013) Preliminary Code Chart for the Pau Cin Hau Syllabary. ()
- 大塚行誠 (2014)「インド・ミャンマー国境地帯に広がる一大言語群、チン語のはなし」 ことば村・ことばのサロン
[最終更新 2022/08/10]