ビブロス文字 英 Byblos/Gubla script
古代フェニキアの都市ビブロス遺跡(現代名シュバイル Jubayl)で発見されたためにこの名が付けられた文字で,エジプト聖刻文字に似ているために「ビブロス擬似聖刻文字 Pseudo-hieroglyphs of Byblos」とも呼ばれる。また,ビブロスの古名「グブラ文字」と呼ばれることもある。この文字の使用時期は,原シナイ文字(前 17 世紀頃)前後の頃と思われる。
文字構造
文字の構造は,単音文字と複音文字(音節文字,/ba/ 型,たぶん /ab/ 型も)の混合形式と思われる。ビブロス文字が,音節構造(複音文字を含む文字体系)でありながら,アルファベット体系に近づいている点に,この文字の重要な意味がある。文字記号の形体の中にもフェニキア・アルファベットのそれと共通と思われるものが認められる(h,k,š,t など)。22 個のみの子音文字からなるフェニキア・アルファベットの単純な構造に対して,この複雑な構造がどうして生じたかは解明されていない。 [1]
ビブロス文字表 [Hans van Deukeren / CC BY-SA 3.0 / 出典] |
ビブロス文字例文
青銅板に刻まれたビブロス文字(上は表面,下は裏面)[2] |
「女神官は所有し,そして神のための特別土地所有権を持つと宣言する。しかし土地所有者たちは<言う>,彼女は共有地の(複数)において 3.95 穀物量分を所有する,と。」Bennett[3] |
注
- ^ 矢島文夫 (2001)「ビブロス文字」河野六郎, 千野栄一, 西田龍雄 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂, p. 806.
- ^ Jensen, Hans (1970) Sign, symbol and script : an account of man's efforts to write. G. Allen & Unwin, p. 275.
- ^ Bennett, Emmett L. / 細井敦子 (2013)「エーゲ海の諸文字体系」Peter T.Daniels, William Bright [編], 矢島文夫 総監訳, 石井米雄, 植田覺, 佐藤純一, 西江雅之 監訳『世界の文字大事典』朝倉書店, p. 135.
関連リンク
[最終更新 2021/11/13]