モン文字 英 Mon script,モン man lik
ミャンマー南部のモン州,カレン州の一部からタイ国にかけて話されているオーストロアジア語族のモン・クメール語族,モン語派に属すモン語を書き表す文字 (文字体系:アブギダ)。モン文字はビルマ文字の成立の母体となったほか,時代的にははるかのちになるが,仏教徒である東部プォー・カレン文字 (仏教ポー・カレン文字) の成立に大きく関わった。ビルマでは 12 世紀パガン朝時期までに,多数の古モン語碑文が刻され,この文字を古モン文字と呼ぶ。13 世紀の移行時代を経て,14~15 世紀,ビルマの南部にあったモン族の国家ペグー・ハンタワディ王国の時代を中心に刻された多くのモン語碑文に代表される言語を中モン語と呼ぶ。綴りの上で,古モン語から現代モン語への変遷の中で時代を画す特徴を示している。パガン時代までのモン語碑文に見られる古モン文字は全体として角ばった方形の文字であるが,中モン語の段階になると現代モン文字と同じく,丸みを帯びた字形になる。 [1]
モン文字構成
頭子音字
インドの音韻学の伝統に従って整理分類された五行音(喉音,顎音,舌音,歯音,唇音)と,それ以外の子音を表す文字群に分かれる。五行音を表す文字群は硬子音字(清音)と軟子音字(濁音)に分かれ,硬子音字は無気音と有気音,軟子音字は無気音と有気音と通鼻音を表す文字が並行して並ぶ。硬子音字と軟子音字の 2 種類の子音字の区別は,それらに母音符号(+尾子音字)が結合するときその母音符号が別々の音価をもつ(別々の読み方をする)ことがある点で,重要なものである。
母音字
母音が頭子音ゼロで出てくるとき,独立の母音字で表記される。下表で〈a〉と母音符号の組み合わせで表記されるものを除いた残りが独立母音字である。
母音符号とその音価
母音はまた,母音符号を頭子音字に付加することによって表記される。同じ母音符号でも,硬子音字につく場合と軟子音字につく場合とでは違った音価をもつ。
頭子音字結合
モン語は頭子音字結合の種類が豊富な言語であるので,頭子音字の結合文字が多い。これらの結合文字の 2 番目の位置に立つ要素は 11 個の文字 (N, N, D, n, m, y, r, l, w, h, B) があり,それぞれ字形を変えたり,小さくしたりして 1 番目の文字の下に重ねて表記される (重ね文字)。
母音符号+尾子音字
尾子音字は〈-k, -ṅ, -t, -n, -p, -m, -y, -w, -h, -'〉の 10 個で,母音符号〈-a, -aa, -i, -u, -e, -o, -å, -us〉と組み合わせて表記される。尾子音字は,頭子音字に《殺母音符号》U+103A(後述ユニコード表参照)を付したもの(殺母音符号により内在母音 a が消え,子音だけになる) を用い,音価は概ねその子音字の表すものに等しい。
テキスト
モン語文例
[John's Gospel. New Testament, 1950, Rangoon] |
テキスト入力
ユニコード
ビルマ文字のユニコードでの収録位置は (U+1000..U+109F) である。モン語で用いる文字・記号を赤字で示す。
モン文字入力方法
ミャンマーのサイト ThanLwinSof: Ekaya からフリーの Ekaya Input Method (32 bit Windows を使用の場合 Ekaya-0.1.9_x86.exe) を入手,インストールガイドに沿ってミャンマー用キーボードを設定する。
注
- ^ 藪 司郎 (2001)「モン文字」河野六郎, 千野栄一, 西田龍雄 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂, pp. 1049-1057.
- ^ モン文字対応フォント: Code2000 | Padauk
関連リンク
- 地球ことば村「世界言語博物館」「モン語(モン・クメール語派<オストロアジア語族)」
- မွန်ဘာသာစကား (Mon language) | Mon language
- Omniglot Burmese
- 中西コレクション(国立民族学博物館)モン文字
- GICAS 文字・データベース「ビルマ文字の碑文・墨文」