ウォレアイ 英 Woleai script

カロリン文字(Caroline script)ともいう。ミクロネシアの中部カロリン諸島のウォレアイ島,ファララップ島,イファルク島,サタワル島,プルワット島など,東西約 480 km にわたる地域で,20 世紀始め頃から用いられた音節文字で,その使用は書簡のほか,男子集会所の梁,カヌー,木鉢,文身(いれずみ)などに及んでいた(参照 Figure 4, 5, 6, 7)。ただし,その歴史については不明の点が多い。イースター島の未解読の象形文字(ロンゴロンゴ文字)との関係の可能性はまずない。ウォレアイ文字は未発達のまま,その使用を停止した。→ 崎山
中部カロリン諸島 → Silabario Woleai |
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文字構成
18 世紀から 19 世紀にかけ頻繁に渡来したヨーロッパの探検家や商人によって,ミクロネシアの一部の人にローマ字はすでに知られていたが,ドイツ統治時代の 1907~1909 年頃,ファララップ島で,それ以前から用いられていた文字と変形したローマ字とを併せて,一応の文字体系ができあがった。この文字は,その後,周辺の島々にも普及した。文字数は,最多で 78 個の象形文字(Type 1)と 19 個のローマ字を借用した文字(Type 2)の合計 97 文字からなる。文字体系としては,音素結合による可能な音節のすべて(ファララップ語では 624 の音節が現われる可能性があるとされる)を表記するためには,不完全である。しかし,出現する音節の頻度と最低限必要な文化的語彙に基づいて,20 世紀に生み出された新しい文字として注目に値する。
ウォレアイ文字表(ファララップ島)の一部を示す。全体は拡大図を参照。番号に下線のあるものは Type 2 に属す文字。

ウォレアイ・テキスト
サンプルテキスト
ウォレアイ文字(イファルク島)→ 崎山

《転写》
i (59)-le (33)gi (48)-le (33)/ka (45)-pe (26)-ta (3)-le (33)/se (39)-bwe (4)-fa (32)-to (17)-gi (48)-che(she(44)-gyu (40)/bwe (4)/ye (49)-bwe (4)/e(we)(78)-we/ka-pe-ta-le.
《訳》
すべて(ilegi-)の(-le)文字(kapetale:英語の借用語)は,それ(ye:3人称単数)が言葉(発音)と一致する(wewe)であろう(bwe)ように(bwe),我々(se:包括形)がそれを書く(fatogi:他動詞)だけ(sheg-yu)である(bwe)。(sheg の語末子音は,次の文字によって表されている)
ウォレアイ文字(イファルク島) → Riesenberg & Kaneshiro

テキスト入力
ウォレアイ音節文字表とユニコード表 → Omniglot


関連リンク
Woleai script
- Omniglot Caroline Island Script
- Proposal for encoding the Woleai script in the SMP of the UCS
注
- 崎山理(2001)「ウォレアイ」『世界文字辞典』(言語学大辞典,別巻,三省堂)
- Silabario Woleai
- Riesenberg, S. H. & S. Kaneshiro (1960) ‘A Caroline Islands Script’ Smithsonian Institution Anthropological Papers 60 (Bureau of American Ethnology)
(4.00 MB)