地球ことば村
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【地球ことば村・世界言語博物館】

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世界の文字

サポテカ文字 英 Zapotec writing,西 escritura zapoteca


「コウモリの神」またはジャガーの形をした骨壺, 300–650年,.高さ 23 cm.[Unknown / CC BY-SA 2.5 / 出典]
サポテカ文字は,メキシコ南部のオアハカ盆地で,前 6 世紀頃から始まり,後 8 世紀まで続くが,それ以後は,線形的な文字配列をやめ,主に場面による情報伝達を利用し始めた。中心となるオアハカ中央盆地では 570 の石碑があり,628 の暦の文字が同定されている。同じく,西のミシュテカの高地,低地,海岸部でも多くの石碑が知られている。[八杉 p. 1017]

サポテカ語は,ミシュテカ語とともにオトマンゲ語族に属する,ともに声調言語であって,紀元前 8 千~前 5 千年頃の共通の祖語は原オトマンゲ語である。分岐したのは,前 4100~前 3700 年頃とされている。両言語は同じ言語体系を有するが,文字遺物の種類も異なり,時代も異なっているから,言語の比較研究における文字の解明はあまり実を結んでいない。[植田 p. 451]

サポテカ文字テキスト

サンプルテキスト

サン・ホセ・モゴーテ出土の石碑3号石碑 [Unknown / CC BY-SA 3.0 / 出典]
3 号石碑 サポテカ文化の第 i 期(前 600~ 200)代表的な文字遺物の 1 つは「踊る人」と名づけられた石板である。裸で踊っている人を表したような人物が彫られ,その足元や体部に文字がある。描かれた人物は裸で目を閉じ口を開け,胸や局部をえぐられて(「死んでいる」を表す)から,捕虜として捕らえられ,苦しんで処刑された様を表し,決して踊っているのではない。この構図は,政治的なプロパガンダ,あるいは見せしめとして作られた意味合いが強い。[植田 p. 451]

俗称「踊る人」の範疇に属する図柄の中でも,モンテ・アルバン北部のサン・ホセ・モゴーテ出土の 3 号石碑は最古のものと言われる。両足の間に 2 つの文字は,この捕虜の誕生日と人名ともなっている。[ 植田 p. 452]


モンテ・アルバンの「踊る人」55 号 [Unknown / CC BY=SA 3.0 / 出典]
55 号石碑 モンテ・アルバン石碑 「踊る人」55 号 「踊る人」の文字では,人物の顔の前に 3 つの文字がみえるが,2番目の「虎またはジャガー」の日の記号,3 番目は「終わり」あるいは「捕獲」とされる。人物の体部は,「いけにえ,「前置詞,6「風の神,7「ブーツ」あるいは「コパル樹脂や食物を焼くための容器」を意味するという。また,FAMSI Writing: Zapotec Writing: Part II, Images 1.1-2.9,コマ番号 3では,性器からの瀉血(しゃけつ)の場面とコメントを付けている。



石碑左 12号と右 13号。暦に関する文字が刻まれている。[HJPD / CC BY-SA 3.0 / 出典]
12・13 号石碑 2 つの石碑は別々に発見されたが,本来この 2 つの石碑は一体であり,碑文が連続した記録であることが別の証拠から確かめられた。このテキストは前 500 ~ 前 400 年頃のものとされ,モンテ・アルバンで知られている最も古い碑文の 1 つである。碑文の内容はまだ十分解読されていない。[植田 p. 454]


モンテ・アルバン石碑 6 号 [Public Domain / 出典]
6 号石碑 サポテカ文化の第 iIII a 期(100~ 500)の文字は,人物像に文字テキストがついたものが主である。文字の数は 80 前後である。暦の文字を入れても 100 くらいしか文字がない [八杉 p. 1018]。メキシコ中央高原の影響である「言葉のふきだし」文様が見られるなどモンテ・アルバンIII期の特色を示す。[ モンテ・アルバン]


ニュイニェ文字

サポテカ文字が刻まれたレリーフ [Museum of Monte Albán LBM1948 / CC BY-SA 4.0 / 出典]
ニュイニュ(Ñuiñe)とはミシュテカ・バハ(低地)のことであり,ミシュテカ高地とトラシュカラ(Tlaxcala),プエブラ(Puebla)の間にある文字を指す。その多くが暦の文字である。400~700 年に通用したといわれる,サポテカ文字の系統である。[八杉 p. 1021]


関連リンク

[最終更新 2023/11/10]