ミシュテカ文字 英 Mixtec writing,西 escritura mixteca
「8 の鹿ージャガーの爪」王,4 人のジャガーと出会う [Unknown / Public Domain / 出典] |
ミシュテカ文字は,隣接のプエブラ州やラスカラ州のスペイン人征服前の文字,とくに先住のサポテカ文字と関連を持つが,その起源は不明である。ミシュテカ語とサポテカ語は同じオトマンゲ語族に属するので,何らかの言語的関係があったと考えられる。したがって,文字にも関連があったと思われる。しかし,ミシュテカ文字は独特の特徴をもち,のちのアステカ文字にはとくに大きな影響を与えている。アステカ帝国の覇権の反映から,現在も,このミシュテカ語圏の地名はアステカの言語ナワトル語で表示される。[植田 p. 962]
ミシュテカ文字は,主に人名・地名だけを記録しているので,限定的または部分的文字体系といわれ,絵文字の段階にとどまり,それ以上に発展しなかった。すなわち,文字学上,初期あるいは形成段階の文字である。表語文字がその中心であって,表音的な原則もある程度ミシュテカの絵文書に導入されてはいるが,ごく初歩的な段階にすぎなかった。この文化の特徴の1つは,スペイン人征服前に作られた絵文書がかなり現存していることで,メソアメリカの絵文書作成伝統の中でも最も重要な地域である。[植田 p. 963]
ミシュテカ文字テキスト
絵文書は歴史的な記述が主であるが,宗教・儀式的な記録もある。供物を捧げたり,流血儀式なども記されている。新年の新しい灯りをともす儀式や神話なども扱われている。場面は水平または垂直線で分けられ,右から左,上から下または下から上に牛耕式に読まれる。[八杉 p. 1031]
中央のシーンは、ミシュテカの起源を、祖先が木から生まれた人々として描いていると思われる。Codex Vindobonensis, plate 37, [Anonymous / Public Domain / 出典] |
Codex Zouche-Nuttall, page 20 [Unknown / Public Domain / 出典] |
注
- 八杉佳穂 (2001)「メソアメリカの文字」河野六郎, 千野栄一, 西田龍雄 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂.
- 植田覺 (2001)「ミシュテカ文字」河野六郎, 千野栄一, 西田龍雄 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂.
関連リンク
- Mixtec
- Omniglot: Mixtec (Tu'un Sávi / Dà'àn Dávi)
- British Museum Codex Vindobonensis (facsimile)
- Codex Vindobonensis Mexicanus 1 Akademische Druck- u. Verlagsanstatt, Graz.
[最終更新 2022/01/20]