書写材料
バタク文書 (樹皮紙 4,竹)
インドネシア共和国のスマトラ島,北スマトラ州,トバ・バタク地方,シマルグン・バタク地方に広く分布するバタク(バタックとも)語を表記するバタク文字で書かれた文書をバタク文書という。形態,内容とも様々でいくつかの種類がある。一つは,竹や骨片を用いたものと,量的にも内容的にもより重要なのがトバ語でプスタハ( pustaha)と呼ばれる経本で,内容は,卜占書,神話,系譜,呪文などの貴重なテキストである。
プスタハ
プスタハを持つダトゥ [Public Domain / 出典] |
その名のとおり,なめした樹皮を素材としている。この樹皮を折本に造り,そこにバタク文字を用い,バタク語で,ダトゥが知るところの,日々の吉凶占い,さまざまな防潔呪術(パグルバラン),鶏を使った占いの方法,吉凶のしるしの読み取り方,さまざまな呪薬(dorma)の解毒法についての指示など,ダトゥが依頼をうけて占うときに参照する内容が記される。[1]
サンプル
樹皮紙
経本は,スマトラ沈香(アリム,bark of the alim (Aquilaria malaccensis) Philippine Native Forest Trees Batak Textsの内皮を一定の幅で適当な長さに切り取り,これをなめしたものを素材として折り本仕立てにした写本である。裏表には厚さ5mm~1cmの木製の表紙が糊付けされる。煤煙墨を用いて書き記した。[2]
|
| ||||
|
| ||||
|
| ||||
|
|
竹・骨片
竹片に短い文ないし数個の単語が記入されたもので,これはおみくじの一種といえるものである。また,丸竹の表面に記された文書の内容は主に日々の吉凶占い(Porhalaan)についての指示で,ほかに通信文や布告文の類もある。竹の長さは数十センチメートルのものから 1 メートルを越すものまでさまざまである。
|
|
バタク族の竹筒に刻まれたポルハラー(ライプツィヒ民族学博物館 所蔵) [Manducus / CC BY-SA 3.0 / 出典] |
注
- ^ 山本春樹 (1989)「バタック人の宿命観--伝承資料とプスタハ資料の比較を通して」『天理大学学報 162』p. 71.
- ^ 柴田紀男 (2001)「バタク文字」河野六郎, 千野栄一, 西田龍雄 編著『言語学大辞典 別巻 (世界文字辞典)』三省堂, p. 738.
関連文献
- Pustaha
- Batak sript Gallery
- 中西コレクション(国立民族学博物館)バタク文字 | ルジャン文字
- British Library Batak manuscripts in the British Library
- University of Florida Digital Collections Batak Bark Book
- Batak Texts Catalog of Bakak Texts
- Southeast Asia Digital Library Indonesia
- 小林宏史 (1988)「バタック族の樹皮布」『月刊染織α : 染めと織りを楽しむ人の生活情報誌』 (90)
- 八杉佳穂監修 (2016)『文字の博覧会 = A TREASURY OF WRITTEN CHARACTERS : 旅して集めた"みんぱく"中西コレクション』LIXIL BOOKLET,LIXIL出版.
- Kozok, Uli (1966) Bark, Bones, and Bamboo; Batak traditions of Sumatra. Illuminations : the writing traditions of Indonesia : featuring manuscripts from the National Library of Indonesia.(Weatherhill)
[最終更新 2022/01/10]