パオ文字 英 Pa-O script

カレン系諸言語は,20 近い言語を含む言語群であるが,そのうち独自の文字をもつのは,スゴー・カレン語,ポー・カレン語(プォー・カレン語),パオ語(パオウ語)の 3 言語である。
パオ文字の起源は,ビルマ文字に基づいて作られたと考えられること以外,明らかでない。パオ人の伝説によると,1057 年にビルマ人のアノーヤター王がモン人の都タトンを攻略したときには,タトンに居住していたパオ人がすでに独自の文字をもっていたという。しかしながら,現在のパオ文字に関していえば,その文字組織を見る限り,あまり古いものではない。おそらくは,19 世紀以降になって作られたものである。
パオ語には,大きく分けて,ビルマのシャン州の州都タウンジーを中心とする地域で話される北部方言と,同じくモン州のタトンやカレン州のバアンなどを中心とする地域で話される南部方言の 2 方言がある。元来のパオ文字は,北部方言の話されている地域で成立したものであり,パオ文字が使用されているのも,もっぱらこの地域である。この文字は,1950 年代にタウンジーで仏教の僧侶たちが中心となって行った綴り字改革により,母音や声調の区別ができるようになった。(→ 加藤)
パオ文字テキスト


The Gospel according to St. Luke in Pa-O (Taungthu) [Rangoon] : British & Foreign Bible Society, Burma Agency, [19--]
関連リンク
注
- 加藤昌彦(2001)「パオ文字」『世界文字辞典』(言語学大辞典,別巻,三省堂)
[最終更新 2019/03/20]