「言語ヒッチハイクガイド」
松岡亜湖 小学校教諭・名古屋市在住
こんにちは、早いもので、前回記事を書いてから、あっという間に2か月が過ぎ、蝉の声の季節となり、気が付けばコオロギの声も聞こえてきます。寒さに弱い私は、夏が大好きです。最近の名古屋の夕立はスコールのようで、昼間はマニラ以上に蒸して、もう、日本はミリエンダ(午前・午後のおやつ)と水浴びと昼寝がありの、熱帯仕様の生活に切り替えるべきだと思います。おやつと昼寝は立派な文化!
6月中旬に栄三越で開催されたWorld Compassというフェアトレード関連イベント http://ethical-penelope.jp/shop/5363 に、フィリピン支援団体のソルト中部名義で参加してきました。アレッポの石鹸の太田さんが東京からいらしていたので、石鹸タワーと共に記念撮影~♪気さくでチャーミングな方でした。
平日昼間だったので聴けなかったのですが、この写真撮影の前々日には講演会もありました。一週間、いろいろな人が話していたのを後で知り、DVDにまとまると嬉しいなあ、なんてことを考えました。
聴けた分のご報告はフェイスブックに書きました。ココウェルの水井さんと、スローコーヒーの小澤さんの話です。
https://www.facebook.com/ako.matsuoka.7/posts/1008960932484762
https://www.facebook.com/ako.matsuoka.7/posts/1009459609101561
最終の日曜が生憎の雨。日本のフェアトレード店舗大集合のイベントでしたので、更に多くの人に足をお運びいただけると嬉しいなあと感じました。以前から、名古屋市の国際協力イベントの来客は多いとは言えず、今もそれは同様ですし、名古屋市がフェアトレードタウンに認証されたことを知らない人は(名古屋人も含めて)多いので、認知が広がるといいなあと思います。
さて、今回はマニラの話を、と考えていたのですが、マニラを書けばパヤタスの話&CDや本を買った話、フィリピノ・アーティストのコンサートに行った話、名古屋のリトルマニラ・池田公園近辺でハロハロ食べ歩きをした思い出話なども続くので、長くなりそうです。先に、バギオ訪問の話をご紹介したいと思います。
6.森の精霊を感じる街――コーディリエラへの入り口、天空都市バギオ――
以前、京都で、CGN(コーディリエラ・グリーン・ネットワーク http://cordigreen.jimdo.com/%E5%9B%A3%E4%BD%93%E7%B4%B9%E4%BB%8B/ )の反町さんからご紹介いただいた、カリンガの泥絵絵本 http://cordillera.exblog.jp/24500217/ の原画展を見に行ったときのことです。偶然、山本公成さんという音楽家の方とお話することができました。山本さんは、バギオから更にバスで数時間移動したイフガオの棚田で「森の精」という曲を作ってらっしゃいます。 http://www.yamamoto-kosei.com/index.html
残念ながら私の旅はバギオ止まりでしたが、確かに、精霊の気配が感じられる街でした。感覚的なものなので行ってみて下さいとしか、言いようがありませんし、個人差はあると思います。私の場合、いわゆるパワースポットに行くと、肩が激烈に凝って痛くなるか、肩凝りが完全に抜けるかするので、何かあるんだろうな、と思っています。薬(科学の結果)が効きやすい・効きにくい体質があるのと同様に、精霊についても感じやすい・感じにくいがありそうな気がします。非科学的だ、と決めつけるのではなく、自然や空気に、目には見えなくとも神聖な何かを感じ、守り続けることもまた、人類の英知の結晶なのでしょう。
バギオには空港がないので、マニラからの移動はバス。途中で渡るのがアグノ川です。この、ルソン北部にあるアグノ川に作られたサンロケダムの影響で、周辺の先住民族の多くは土地や家を失っています。フィリピンでは、「政治的殺害」が少なくないため、住民運動のリーダーも犠牲になっています。日本のODAを含む政府の開発が適正かどうかを監査し、住民の生活を支援する上で、NGOの役割は非常に大きいです。
http://www.foejapan.org/old/aid/jbic02/sanroque/doc/cpa-brochure.html
http://www.foejapan.org/aid/doc/trc_070607.html
http://blog.canpan.info/foejapan/archive/189
ルソン島北部・コーディリエラ地区の半分は、鉱山開発申請地です。先住民の合意プロセスがなく開発が進めば、住民の生活は破壊されてしまいます。CGNは、持続可能な農業や環境教育の活動を通して、先住民族の生活や文化を守り、国際交流の輪を着実に広げています。(行ける人はぜひ、このスタディツアーへ!夏休みの短期版もありますし、2月にも開催されてます)
http://janl.exblog.jp/9744569/
https://www.facebook.com/mariko.sorimachi.7/posts/10207044540026277
このCGNがバギオで運営するのが、TALAシェア&ゲストハウス。http://www.tala-guesthouse.org/ 宿泊すると、北部山岳地方の先住民族が、焼き畑をすることなく森を守りながら生計を立てることのできる、アグロフォレストリー(森林農法)で育てた、美味しいコーヒーを好きなだけ飲めます。私もたくさんいただいてきました。
http://cordigreen.jimdo.com/%E3%82%A2%E3%82%B0%E3%83%AD%E3%83%95%
E3%82%A9%E3%83%AC%E3%82%B9%E3%83%88%E3%83%AA%E3%83%BC-%E6%A3%AE%E6%9E%97%E8%BE%B2%E6%B3%95/
http://worlli.com/cgn-coffee-sorimachi/
3月末に宿泊した時は、個室を利用しつつ、共用のキッチンスペースに時々いらした長期滞在のご家族連れに観光地を教えて頂いたり、おやつをお裾分けして貰ったりして過ごしました。よく喋るかわいいお孫さんの姿に和んだものです。滞在中、TALA内のカフェ・YAGAMでご飯を食べたり外食したりして、キッチンはほとんど使わなかったのですが、バギオは有機野菜栽培が盛んなので、料理もいいかもしれません。YAGAMはこちらの三番目で紹介されています。
http://baguio-jic.com/best-restaurants-10
お忙しい反町さんですが、一緒にお昼を食べてお話することができました。当初は、1月~2月のルプルパ村の絵本の展示会のことを教えてもらうつもりでした。
https://www.facebook.com/mariko.sorimachi.7/posts/10207016127435980
ところが、泥絵の作品を作ったヴィンスさんが、アメリカ留学を直前にして2月に亡くなり、2日後に追悼展がカフェ・YAGAMで行われると伺い、何と言ったものか分からずまごついてしまいました。「泥絵のワークショップ」について、子どもが参加して若い方が講師だというのは写真から分かっていましたので、まさかそんなことになっているとは全く想像もしていませんでした。実際、ヴィンスさんは、23歳の若さで亡くなられたとのことです。子供の頃から苦労して、これから、という時なのに、と、反町さんはとても衝撃を受けてみえました。才能を見出し、一緒に活動し、飛翔のきっかけができた仲間を失う痛みは如何ばかりかとお察しします。ヴィンスさんのご冥福を心からお祈りします。
https://www.facebook.com/mariko.sorimachi.7/posts/10207258078084595
https://www.facebook.com/photo.php?fbid=10207706946106015&set=
a.10202535611545883.1073741847.1663607768&type=3&theater
ヴィンスさんの作品はこちらで見ることができます。芸術家として活躍しただけでなく、子供を対象に泥絵のワークショップを行い、文化の伝承者としても活躍したことが、Inquirer(フィリピンの大手の新聞です)でも取り上げられています。お母さんを助けて映画の入場券売りや荷運びを行い、苦労を重ねつつも不平は言わず、にこにこしていた人柄が偲ばれます。
http://www.rappler.com/life-and-style/arts-and-culture/122756-filipino-coffee-artist-vincent-navarro-dies
http://newsinfo.inquirer.net/767849/a-last-shot-of-baguio-coffee
ニューヨークで才能を伸ばしてほしかったなあ。いい人ほど、神が傍に呼ぶ、と聞いたことがあります。迷信だとは思いつつ、そうとでも考えないと、やり切れない気持ちになりました。若い人には、やっぱり、夢を全うして生き切ってほしいです。大人として、そういう社会の構築を目指したいものです。
では、ヴィンスさんの作品のひとつである泥絵絵本と原画展のご紹介のリンクを貼り付けて、この回の締めと致します。泥絵の先生のトップにはヴィンスさんのお名前があり、多くの子供が絵本の製作に携わり、泥絵の文化が大切に受け継がれています。今なお精霊が生きるカリンガの文化の一端を感じていただければ幸いです。
https://s3-ap-northeast-1.amazonaws.com/npokotobamura/%E3%81%93%E3%81%
A8%E3%81%B0%E6%9D%91/%E3%81%93%E3%81%A8%E3%81%B0%E6%9D%91%
E3%83%95%E3%82%A3%E3%83%AA%E3%83%94%E3%83%B3/luplupa.pdf
次回は、カリンガの音楽について、EDAYA http://edaya-arts.com/?page_id=724 にてエドガーさんと山下さんに聞いてきた話をご紹介します。今思い出せば、滞在3日とは思えない充実した時間は、精霊からの贈り物なのかもしれません。
【2016年8月31日掲載】