苗語ラテン文字

ミャオ(苗)語は,中国,貴州省を中心に,広西壮族自治区,湖南省,四川省,雲南省などの中国南部,および,インドシナ半島のヴェトナム,ラオス,タイの3か国に分布する。この言語は大きく3つのグループに分けられ,それぞれの自称で「人」を意味することばから,「コション語」(または湘西[しょうせい]苗語), 「フム語」(または黔東[けんとう]苗語),「フモン語」(または川黔滇[せんけんてん]苗語)とよばれている。 [1]
ポラード文字が 苗語各方言 [2] を表記するのに不適切なところが多いため,中華人民共和国成立後,ラテン文字による新しい表記案が作られた。1956 年 10 月に,貴陽で民族代表も参加した「苗語語言文字問題科学検討会」が開かれ,席上,漢語の拼音方案の原則にのっとり,黔東方言,湘西方言,川黔滇方言の川黔滇次方言の3方言それぞれに,ラテン式苗文字案を作ることが決定された。1956 年の案はその後改正されたが,1961 年にいったん中断された。その後,1981 年(黔東)と1983 年(湘西)に復活し,改良された方案が現在使われている。字形はラテン字形26文字をそのまま使うが,組み合わせ方法が各地で異なり,6あるいは8種の声調は,音節末尾に特定のローマ字1字を加えて表記する。 [3]
湘西苗文
苗语湘西方言の主要な分布地は湖南省湘西土家族苗族自治州,貴州省松桃(しょうとう)苗族自治县で,話者数約百万人。
湘西苗文子音字・母音字 [4]
湘西苗文は 48 の声母と 35 の母音からなる。

声調表
湘西苗文には6種類の声調があり,音節末尾に声調を特定するための1文字を添える。

サンプルテキスト

黔东苗文
苗语黔东方言の主要な分布地は貴州省黔东南苗族侗族自治州, 黔南布依族苗族自治州, 黔西南布依族苗族自治州, 广西壮(チワン)族自治区融水苗族自治县, 三江侗族自治县, 靖州(せいしゅ)苗族侗族自治县で,話者数約二百万人。
黔东苗文子音字 [5]

黔东苗文母音字
黔东苗文の母音字は,1981 年にそれまでの母音に9種を追加し,現行の 26 母音字となった。

声調表
声調は次の 8 種類である。

サンプルテキスト

川黔滇苗文
苗语川黔滇方言は中国の四川省,贵州省,云南省,また,ラオス,ベトナム,タイに分布し,話者数約三百万人。
川黔滇苗文子音字 [6]

川黔滇苗文母音字

声調表

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関連リンク
注
- ^ 新谷忠彦(1992)「ミャオ語」『世界言語編(下-2)』(言語学大辞典,第4巻,三省堂)
- ^ 王辅世主编(1985)『苗语简志』( [北京] : 民族出版社)
- ^ 西田龍雄(2001)「ミャオ文字」『世界文字辞典』(言語学大辞典,別巻,三省堂)
- ^ 向日征(1992)「湘西苗文」『中国少数民族文字』(中国社会科学院民族研究所主編,中国藏学出版社)
- ^ 王春德(1992)「黔东苗文」『中国少数民族文字』(中国社会科学院民族研究所主編,中国藏学出版社)
- ^ 王德光(1992)「川黔滇苗文」『中国少数民族文字』(中国社会科学院民族研究所主編,中国藏学出版社)