先住民族言語
釧路川(塘路付近)
先住民族言語に関するいままでの仕事をいくつか紹介します:
1)金子亨 『先住民族言語のために - 危機に瀕する言語の復興-』 草風館 1999
この本は草風館休業のため絶版ですが、残部についてはサッポロ堂にお問い合わせください。
『先住民族言語のために』目次
2)プフタ著 ロク・金子編 『ロシア語ーニヴフ語会話帖 及び ニヴフ語ーロシア語語彙集』
「環太平洋の『消滅の危機に瀕した言語』に関する緊急調査研究(文部科学省特定領域研究」(A)A2-017
2002。
現地還元分として殆どをプフタさんに贈りましたので、 残部は殆どありません。これもサッポロ堂にお問い合わせください。
『会話帖』はしがき
3) 入手困難な論文:
(1) 「『ソビエト的北方』と『タイガとツンドラ』について」 1999 『窓』No.111, 1999-12 ナウカ社刊
ソ連初期の1920年代、ロシア内先住少数民族への啓蒙活動が始められた。その中心に活動したのはボゴラス・タ
ンでした。「北方委員会」の初期の活動
についての調査報告です。
CC&TT
(2)「ラテン式書記法始末記」 『千葉大学ユーラシア言語文化論集』 (略称: CES) 3. 2000.3
ソ連初期に試みられたラテン式書記法の短い運命についての調査報告。
CES3 は残部僅少。
4)先住民族言語に関する論文:
(1) Why Incorporation? CES 6
(千葉大学ユーラシア言語文化論集6,2003)
「抱合」を持たない複総合的(polysynthetic)言語が在る(例:イテリメン語)ので、両者は相関的ではない。この二つの文法的技術は、IP内部の範疇を取り込むか、
VP内部の範疇を語彙化するかという点が違う。 「もし或る言語が動詞を動詞句要素で飾ろうとして語構成・抱合という文法建築法を使うか、それとも華麗な複総合的な
語をIP要素で刺繍しようとするかという言語の形式趣向によって「抱合」と「複総合」とがわかれてくる」というのが結論をだしました。
(2)Nivkh Time Expression 1 CES 7
(千葉大学ユーラシア言語文化論集7,2004)
ニヴフ語の時間表現について考えました.1では主にオタイナさんの状態動詞の動作様態につい
て書きました.
(3) Nivkh Time Expression 2 CES 8
(千葉大学ユーラシア言語文化論集 8,2005)
ニヴフ語時間表現の続きです.ヤコブソンが時制の範疇を求めなかったことは正しかったのではないでしょうか.ニヴフ語アスペクトと動詞の語意について論じました.
(4)Note on CAUSE in Nivkh CES9-1
(千葉大学ユーラシア言語文化論集 9,2006)
ニヴフ語の使役について書きました。被使役者が行為者であるときに、この言語は特別な格表示をし
ます。統語的に規定されたactive caseと見なされます。
(5)Conditioned Animacy Marking in Nivkh. CES 10
(千葉大学ユーラシア言語文化論集 10,2008)
ニヴフ語の格表示-axの機能的特性について他動性接辞-guとの関係で論じました。日本言語学会134回大会(2007.06)で話したものを英文にしました。
(6)「ニヴフ語抱合再論」『サハリンの言語世界』津曲敏郎編 SAKHLGS
1960年代レニングラードで展開された論争を検討してニヴフ語が抱合技術を用いた語形成を限定的にもっていることを述べた。
(7)Nivkh Incorporation revisited. CES (Journal of Chiba University Eurasian Society)No. 11(2009.03), pp
ニヴフ語の抱合は直接目的語の前接だけが生産的で、再帰代名詞や副詞の前接は非常に限定的である。一方接尾接合は多重的で順序よい。
動詞的複合語は時制接辞・終助詞によって後ろが標示されるので、抱合的前接からそこまでが自立的語形式である。それは前接抱合的総合構造 である。「古アジア諸語」の語結合の一類型であるという趣旨の論文です。→ CES11
(8) 「ニヴフ語動詞の語形成」CES12
ユーラシア大陸北東部に散在する「古アジア諸語」の言語構造にはかねてから集中的な関心を寄せてきましたが、この言語の研究調査も
かなり進んだ結果、今日ではこれらの個別的構造の少なくとも共時的な比較がある程度は可能な段階に達した用に思われます。そこで、
ここ数年は、これら諸語における形態素の配列と結合の多様性を比較検討して、個々の言語に見られる数学的趣向の違いを把握し、ひいて
はそのgeniusとそれらの景相生態学的特性との関係を見いだすことができればと考えています。この論文はその足がかりです。CES12-1