古代イタリアの文字 英 Scripts of Ancient Italy,Ancient Italic alphabets
紀元前 1 千年紀の古代イタリア半島とその周辺で行われたアルファベット系文字の総称。これに属する文字を地理的に分類すると次のようになる。なお,古代イタリアで古い文字資料を残した諸民族の言語はエトルリア語以外は,すべて印欧語系の言語である。→ 松本
紀元前 5 世紀のイタリアの言語分布 → Bonfante |
古代(原)イタリアの諸文字一覧
次に,古代イタリアの諸文字を地理的に分類して示す。→ 世界の文字研究会
古代イタリア文字の発展
カルキス文字
古代イタリアの地に初めて文字をもたらしたのは,紀元前 8 世紀以降,南イタリアのクマエを拠点に活発な植民活動を行ったギリシア人,とくにエウボイア島のカルキス出身のギリシア人であった。彼らがこの地にもたらしたのは「カルキス文字」とよばれる西ギリシア型の最も古いアルファベットである。この文字は,当時のイタリアの中・北部を中心に文化・経済面で最も先進的な民族であったエトルリア人によっていち早く採用され,ここにイタリア最古のアルファベットである「エトルリア文字」が確立された。古代イタリアにおける文字の歴史は,西ギリシア文字の流れを汲むこのエトルリア文字から発祥したもので,上にあげた諸々の古代イタリア文字は,一部の例外を除き,すくなくともその初期の形態は,いずれもそれぞれの地域・言語におけるエトルリア文字の適用と改変によって成立したものである。→ 松本
ラテン文字の支配
現存するこれらの文字資料の年代は,最古のエトルリア文字が確立された紀元前 7 世紀から紀元前 1 世紀頃まで及ぶ。しかし,それ以後,ローマ帝国の隆盛に伴い,イタリア半島の言語・文字文化はラテン語とラテン文字の完全な支配下に置かれ,諸地域に固有な文字形態はその言語とともに消滅の運命をたどった。以来,西ヨーロッパの文字の歴史は,西ギリシア型アルファベットの流れを汲むエトルリア文字の一発展形態であるこのラテン文字を基盤として,様々な展開を遂げることになった。
テキスト入力
ユニコード
古代イタリア文字のユニコードでの収録位置は U+10300..U+1032F である。対応フォント: Noto Sans Old Italic,Quivira,花園明朝 など。
関連リンク
- Old Italic script
- Omniglot Old Italic alphabets
注
- 松本克己(2001)「古代イタリアの文字」『世界文字辞典』(言語学大辞典,別巻,三省堂)
- 世界の文字研究会 編(1993)『世界の文字の図典』(吉川弘文館)
- Bonfane, Giuliano, Larissa Bonfante (1983) The Etruscan language: an introduction. (Manchester University Press)